京の街を見守る「大文字山」は京都市左京区にあり,如意ヶ岳,如意ヶ嶽とも呼ばれています.街中から近く,1時間程度で登り切ることができ,プチ・トレッキングに最適です.山頂からの眺めは絶景で,京の街を一望に見渡すことができます.
毎年8月16日夜の「五山の送り火」で,最も雄大な「大」の字が点火される山でもあります.
以下に,大文字山の「大」の字までの登山ルートを紹介します.
銀閣寺,法然院,霊鑑寺,蹴上,山科の毘沙門堂裏手などからの入山が可能です.最もポピュラーなのは銀閣寺ルートで,道も整備されており登山客も多く往来しています.以下の地図上のGPSによる軌跡は,銀閣寺ルートです.GPS軌跡の起点となる銀閣寺橋のスタート時刻は12:55,「大」の字のゴール時刻は13:44でした.のんびり写真を撮り休憩を入れながら登っても,1時間前後で山頂まで行くことができます.
なお,今回の下山ルートは,法然寺裏手に降りるルートをとりました.大の字の左の払いの字画に沿って階段を下り,最初に下りに入る道さえ間違わなければ,道なりに降りてくることができます.このルートは人がとても少なく,山道は太い樹木と背の高い木立に囲まれて原生林のような雰囲気を楽しみながら歩くことができます.夏は蝉しぐれが降り注ぎ,光と緑の陰のコントラストが印象的な道が続きます.下った最後には,法然院を拝観することができます.登山ルートとしては,銀閣寺ルートよりはきついと思います.
最寄の市バスのバス停は「銀閣寺前」です.バス停を降りたら,まずは銀閣寺を目指して歩き始めてください.お腹が空いていてお弁当持参でない場合は,この近辺で先に食事をしておくのが得策です.但し,銀閣寺という世界的な観光地が間近にあるので,周辺のお食事処は比較的価格帯が高めの設定です.また,休日の昼間は観光客で信じられないほどの混雑ぶりで,人気のお食事スポットには行列ができるほどです.
そこで,混雑を避けて,白川今出川交差点付近を少し離れたところにあるレストランや食堂まで歩くだけで,待たずに食事をすることができます.倹約するなら,白川通沿いのスーパーでお弁当と飲み物を買って登れば,山頂で絶景を眺めながらご飯を食べることもできます.
銀閣寺を目指して歩き始めると,しばらくして銀閣寺橋を渡ります.
銀閣寺橋の下を流れているのは白川で,白川沿いは哲学の道になっています.橋を渡ったら更に直進して,両側に土産物屋が立ち並んだ通り道(銀閣寺道)を進みます.しばらく歩くと,右側に京漬物「小松」があります.老舗らしい看板が印象的です.
他にも,漬物を売る店は多くありますが,夏場の「きゅうりの1本漬」はお勧めです.1本まるごと浅漬けにして割箸に刺した状態で冷やされて売っており,1本100円程度で買ってその場で食べることができます.この他に,八ツ橋やソフトクリーム,京都らしい雑貨を売る店も多くあります.
この道(銀閣寺道)の突き当たりが,銀閣寺の山門です.8月16日の大文字の前にはこの山門の前にテントが出て,大の字で燃やす護摩木の奉納が受け付けられます.護摩木に「家内安全」や「大願成就」などと書いて奉納すると,送り火で燃やしてもらえます.
銀閣寺の山門前まで来たら左に曲がり,北に向かって進みます.ここからは,観光客はほとんど見かけなくなります.
この突き当りが,八神社の鳥居です.
大文字の登山道へ行くには,鳥居を左に見ながら道なりに右に曲がります.
しばらく進むと,二股の分岐があります.この二股は右に進んでください.ここからが大文字の登山道です.
いよいよ登山がスタートです.見上げると緑のもみじも鮮やかです.
少し登りかけたところに,飲料の自動販売機があります.
飲み物を何も持ってきていない場合は,必ずここで買いましょう.山道を登り始めると喉が渇きますが,これより先に自動販売機はありません.また,山頂には自動販売機はもちろん,水分をとれるような水場もありません.ここで買っておかないと,あとで必ず後悔します.また,ここで買っておけば,山頂に到着したときに,まだ冷えた状態の飲物を飲むことも可能です.
道の右側には,川が流れています.あまり水量は多くありませんが,水音が爽やかです.
途中で,橋もわたります.なだらかな登りが続きます.
道なりに大きく左に曲がってすぐに,「山火事注意」の横断幕が見え,その下に橋があります.
この橋を渡って,いよいよ本格的な登りに入ります.ここからは狭く傾斜のある山道になりますので,足元をしっかり確認しながら登ります.
道なりの登りで,途中に平坦な場所もありますが,道に迷うことはありません.
途中で,山道の幅が広い場所に出ますが,ここはやや道に迷いやすいので注意が必要です.休日の昼間であれば他に登山している人も多いので,まず道に迷うことはないと思います.
道に迷わないための目印となったのが,「ハイキングマーカー」です.ボーイスカウトの方々がつけたみたいです.この平坦な場所から山頂までの区間だけはこの「ハイキングマーカー」が一定の間隔でついていましたが,プログラム終了後には回収します,と書かれていました.次回来るときには,もうないかもしれません.
更に細い山道を登ります.
しばらく登ると,突然,空が開けてきます.ここまで来たら山頂は目の前だと思ってください.
空を見ながら登り始めてしばらくすると,左に最初の火床が現れます.
大の字の左の払いの部分の先端です.
そして,登りの最後に控えているのが,心臓破りの階段です.
あと少し.
階段を昇りきったところが,大の字の,ちょうど真ん中の,交点の部分になります.
ここからの眺めは最高です!
大の字の交点の火床です.
五山の送り火です.
法.
妙.
舟形.
左大文字.
鳥居形はよくわかりませんでしたが,どこかに見えていると思います.
更に,上へと階段を上ります.
すると,大の字の最も上の部分の火床があります.
ここまで登れば,さらに眺めは格別です.お弁当を持ってきて食べている人,トレーニングしている人,ビデオを回して眼下の風景を撮影している人,記念撮影をしている人など,天気のいい日には多くの人がここにいるはずです.
季節は秋.すすきの穂が青空に輝いて,登山の疲れを癒してくれました.
山頂からはいくつかの下山ルートが見えています.
下山ルートとして,今回は法然院裏手に出るルートをとります.登ってきた階段を下り,しばらくは左に火床をみながら下ります.
直進すると,やや急な下り勾配が続きます.滑落しないように,注意深く降りてください.
途中,観察の森に降りるルートもありますが,今回は観察の森方面には降りません.直進します.
下りは一直線で道に迷うことはありませんが,途中で1か所,尾根道と下山道との分かれ道があります.
小さな2本の道標が目印です.左に折れて,道標の脇を通り過ぎるようにして下へと下ってください.
この法然院までのルートは,銀閣寺ルートと異なり,他の登山者や下山者に会うことは滅多にありません.
道幅は狭いですが,休みの日でも下山中に1度も他の入山者とすれ違うことがないほど人が少なく静かで,巨木も多く,まるで原生林の中を歩いているような感覚になります.
法然院の境内に入ってくると,注意書きも見られるようになります.法然院近くの左側に,「みつばち営巣中につき注意」の張り紙がありました.静かに通り過ぎます.降りてくると,法然院の墓地の裏手に出て,法然院の山門前に出ることができます.
拝観してから境内を出て,法然院・森のセンターで一休みするのがよいと思います.森のセンターへは靴を脱いで上がります.広くはありませんが,野生動物のぬいぐるみ,ポストカードや雑貨などが販売されています.環境教育のための書籍も置いてありました.窓からの木漏れ日が美しいセンターです.森のセンターの前には休憩用の大きなテーブルと椅子があり,腰かけてゆっくり休むことができます.
森のセンターには,大文字山の情報も集まっているようです.大文字登山でスズメバチに遭わないかと懸念されますが,心配なら事前に森のセンターに立ち寄って確認してから登山するとよいと思います.本日時点では,刺された,とか,営巣している,といった話は聞かないようです.
法然院から銀閣寺までは,哲学の道を歩きながらのクールダウンに最適です.途中,白川の両側にはおしゃれなカフェもあります.
哲学の道を歩いて,銀閣寺橋まではおよそ10分~15分程度です.